企画展ご挨拶「平成の映画ポスター展」
1989年1月,元号が「昭和」から「平成」に改元されました。「国の内外,天地とも平和が達成される」という意味で,日本の元号では初めて「成」が使われました。
以来,30年以上にわたる「平成」の時代は,メディアが成長し続けた「昭和」に対して,情報の伝達・共有に革命をもたらした「インターネットの時代」とも言われています。スマートフォンが生活の中に定着し,新聞・テレビ・映画などのメディアにも大きな変化をもたらした時代でした。
弊館では,第2回企画展として『平成の映画ポスター展 ダイハードから万引き家族まで』を開催する運びとなりました。平成の時代に国内で上映された2万以上に及ぶ作品の中から興行成績や話題性,あるいは,評価の高かった125作品を選び,その映画ポスターを展示いたします。
企画展示室へ足を踏み入れていただきますと,映画に登場する人物の視線や表情,あるいは,映画の一場面を連想させる壮大な背景に浮かび上がる主人公の姿に,思わず映画の世界に誘われていくことでしょう。
そして,映画ポスターや映画にご自身の「平成」を重ねて鑑賞していただき,映画の内容はもちろんのこと,映画を見終わった時のご自身の感動や当時の日常の細部までも思い浮かべていただけるのではないでしょうか。
あわせて,映画監督や映画製作の手法など映画界の変遷を展示資料から読み解きながら鑑賞していただくこともできます。
もう一つは,デザインとしての映画ポスターの魅力をご覧ください。ポスターの起源は古代ギリシャ,ローマ時代に,納税について壁に文字を書いて人々に伝えたことだと言われています。やがて,19世紀後半に入ると,石版画(リトグラフ)や彩色石版画などの印刷技術が発達し,画家による描写なども加わり,その表現が飛躍的に高まりました。
ポスターの役割は,『あるものの良さなどを大衆に説明して広めること。誇張して事実以上の事柄を表現すること』など「広告・宣伝」と考えられています。送り手の意図を瞬時に伝えるためにキャッチコピー(短い文章・文字)や図柄の組み合わせを工夫して魅力あるものにする営みはポスターの基本と言えます。
そして,見る者を心地よく導いたり,よい方向に働きかけたりする力も求められています。
素晴らしい映画はいつまでも私たちの心に鮮烈な記憶として残っていきます。この企画展では,映画ポスターとともに「平成」の映画をふり返り,新たな時代「令和」の映画やポスターに思いを巡らせていただけましたら幸いです。
令和元年6月吉日
館長 後藤昌美