掛軸は、書や日本画を裂(きれ)や紙で表装して、床の間などに掛けて鑑賞するものであり、掛物とも呼ばれる。掛軸は山水や四季花鳥図画、慶事お祝い用など暮らしを彩り、私たちの心を豊かにしてくれる室内装飾の重要な役割を果たしている。
  掛軸の歴史を紐解くと、実に古いことがわかる。日本では飛鳥時代に中国から仏画として伝えられた。鎌倉時代後期に禅宗の影響による水墨画の流行があり、掛軸も時を同じくして流行したと言われている。「掛けて拝する」仏教仏画の世界から、花鳥風月の水墨画など独立した芸術品をさらによく見せる補完品として発達していった。
 室町時代、千利休が掛軸の重要性を強調すると、茶を愛する人たちにより掛軸は爆発的に流行するようになった。
 江戸時代には明朝式表具が日本へ入り、文人画には文人表装など掛軸が華やいでいった。それと同時に、表具の技術技巧が著しく発展を遂げた。
 明治・大正期には日本画の隆盛により、掛軸もさらに大きく飛躍していった。
 平成17年度より、本館一階のコーナーを使い、「マイコレクション展」をずっと開催してきた。これは市民の皆様が自分のコレクションを自由に展示するもので、内容は全く展示者に任せられている。一回の展示期間が2ヶ月となっており、年に数人しか展示することができない。このマイコレクション展は、年々好評を受けてきた。
 今回の企画展では、大きな意味で市民の大マイコレクション展になればよいと考えている。さまざまな家庭に埋もれている貴重な掛軸を一同に展示し、みなさんで掛軸を楽しむ展示になればと思っている。したがって、掛軸のコンクールではないから、高価な掛軸はご遠慮願い「ふだん着の掛軸」ということで、出展依頼を申し上げてきた。800年あまり続いている掛軸は日本の伝統文化の一つとして高く評価できるものである。
 出展者には、それぞれその掛軸に固有の思いがあり、時に掛軸に生きる力を与えられたかもしれないし、癒しの効果を求めていたかもしれない。 幸いにも、多くの方々からご協力とご支援をいただき、出展数が会場一杯になるまでに至った。中には長い間家庭の片隅に埋もれていた掛軸が日の目を見ることになった物もある。掛軸を通して日本の伝統文化を共有する機会や、掛軸に興味や関心を持つ市民のみなさんの共通の話題になれば幸いである。
 出展に際し、協力していただいた方々や関係者の皆さんに深甚なる感謝を申し上げます。

                平成22年1月10日 羽島市歴史民俗資料館・映画資料館 館長 岩田 源五

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